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てかてんの書斎

書斎は「学んだり、考えたり、静かに読書したりする場所」だと思います。ここでは、自分の書斎かのように「学んだり、考えたり、書籍について考察したり」する場所です。明日をもっと素敵な一日にするための、考え方・習慣・仕組みについてもお話していきます。

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「夜のばけもの」〜他人の考えを理解するのは難しい〜

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よるのばけもの

 

 

「夜のばけもの」

 

住野 よる 著 読了。

 

 

「君の膵臓を食べたい」でデビューし、「また同じ夢を見ていた」の2作目も続けての人気作品となった住野よるさん。

 

注目の第3作目は、この「夜のばけもの」

 

住野よるさんは、「教室の隅っこにいるような子の夜に創造性があるはずだ」ということがペンネームの由来となっているそうですが、

 

登場する主人公たちはそのイメージに当てはまったキャラクターが多いように見えます。

 

「夜のばけもの」の主人公:あっちーは、クラスで可もなく不可もないといったポジションを貫く男の子で、

クラスで起きているいじめに対しても、波風立てないよう考えて行動している。

 

いじめを受けているのはある女の子。

 

あっちーは、その子を一緒にいじめようとしているわけではないけれど、

クラスの中でその子を無視したり机を汚したりするのは「当たり前」になってしまっている。

 

なるべく波風立てないよう、積極的にいじめたりはしないけれど、無視したりは合わせてやっているような感じ。

 

ある日、ばけものになったあっちーは、なんとなく夜の学校に忍び込んでみる。

 

するとそこに、いじめられている女の子が一人で時間を過ごしていた。

 

昼間は会話のない二人が、夜の学校で時を過ごす中で、少しずつ仲良くなっていく。

 

女の子はばけもの姿のあっちーを怖がらず、あっちーは昼間いじめられているとは思えないほどあっけらかんとしている女の子に興味を持つ。

 

しっかりとした考えを持ち、いじめを苦にしていないように見える女の子が、昼間思っている心境がとても複雑だが共感できる物語。

 

 

 

 

 

周りに合わせてしまうあっちーの心境

 

 

子供の頃、クラスの中でパワーバランスがあったと思います。

 

明るい子、発言力がある子が集まる主要グループのようなものがあり、その子たちに逆らうとクラスの居心地が悪くなる。

 

そんな気持ちから、周りにペースを合わせる子たちが多かった印象があります。

 

中でも正義感が強く、真っ向から勝負する子もたまにいますが、少数だと思います。

 

実はこれ、子供の頃だけの話ではなく、大人になっても社会で同じようなパワーバランスが生まれています。

 

ビジネス書作家の本田健さんは、このパワーバランスを著作「ユダヤ人大富豪の教え 再びアメリカへ」にて、人間関係のマトリックスとしてまとめられています。

 

人間関係は、ポジティブ、ネガティブ、依存、自立の4つの要素にて、

 

ポジティブ自立、ポジティブ依存、ネガティブ自立、ネガティブ依存の4タイプに分けられるとのこと。

 

皆誰しも、必ずどれかに当てはまり、自分が接する相手に応じていろいろなタイプを使い分けているということでした。

 

 

各タイプの詳しい内容はさておき、イメージをお話ししたいと思います。

 

例えば自分が、ある会社で仕事をしているとします。

 

指導してくれる上司Aは、あまり強気は発言はせず、あまり怒ることもない保守派なタイプ。

 

私は、上司Aに対しては思ったことはなんでも話すし、軽い冗談を言うこともあります。

 

また、ある上司Bは、仕事もバリバリこなす強気なタイプで、気にくわないことがあればズバズバ言ってきます。

 

私は、上司Bに対しては気持ちに蓋をし、できるだけ上司Bの発言にも耳を傾け、冗談を言うとしてもかなり様子を見ながら言ってみます。

 

この例は、自分が普段どんなタイプであろうと、その自分よりもパワーバランスが強い人と弱い人では、それぞれに合わせて自分のタイプを変化させていることを表しています。

 

一緒に過ごす相手に応じて、自分とパワーバランスを調整するようにお互いがタイプを変化させながら人間関係を形成しているということを示しています。

 

この人間関係のマトリクスは、本当に共感できました。

 

 

普段一緒に過ごす仲の良い友人であっても、同じような性格の友人とはしっぽり落ち着いて話しながらお酒を飲んで楽しみますが、勢いのあるエネルギッシュな友人と過ごす時は、彼のペースに合わせてついていくような遊び方を楽しんでいる自分がいます。

 

しかも、ほぼ無意識のうちにそうなってしまっているのです。

 

 

 つまりあっちーにも、女の子にも、クラスの中に渦巻いている人間関係のマトリクスが作用し、大人しいタイプの二人はクラスの主要メンバーとも言える勢いのあるメンバーに無意識に合わせてしまっているのだと言えます。

 

あっちーは、いじめられている女の子を一緒にいじめようとは思わないが、クラス全体がいじめそのものを見過ごそうとしているエネルギーに合わせてしまう。

 

女の子も、いじめられている現状を打破するほど、人間関係のマトリクスに逆らえていない。

 

そんなパワーバランスが見て取れます。

 

 

あっちーの気持ちもすごくわかるし、周りに合わせてばかりでなく、なんとかしたいともがく気持ちもよくわかります。

 

社会集団によく起こるバランスを、とても明確に描かれていて、共感しました。

 

日本人の特性なのかもしれませんが、相手に合わせる、周りに合わせることが正しく、それに反する少数派は浮いてしまうようなところがあります。

 

裏を返せば周りとの協調性、調和を大切にする日本の精神が現れているとも言えますね。

 

 

やはり、住野よるさんの作品は、人間の心をよく表していて面白いです。

 

 

 

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