てかてんの書斎

本業はメーカーの商品開発エンジニア。自宅ではもっぱら読書を楽しむ書評ブロガーとして活動中。読書は年間100冊ペースで、小説でもビジネス書でもなんでも読みます!ブログでは、書評・本から得た学びと考え・その他雑記記事を書いています。

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「愚者のエンドロール」自主制作映画の犯人と真相を推理する古典部シリーズ第二弾

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愚者のエンドロール (角川文庫)

 
 
米澤 穂信 著
 
 
 
氷菓」に続く古典部シリーズの第二弾。
 
古典部シリーズ第一弾「氷菓」の書評記事は以下からご一読ください。
 
 
2年生のある先輩から「自主制作映画を見てくれないか」と依頼を受ける古典部一同。
 
クラスで制作したというミステリー風の映画を見て、感想でも聞きたいのだろうか?とみんなで観に行くことに。
 
そこで先輩に言われたことは、
 
 
・ 脚本を書いていた女の子が結末を伏せたまま逃げ出してしまった
 
・ この物語の犯人と真相を推理してほしい
 
 
ということだった。
 
この突拍子も無いお願いに、「やらなくていいことならやらない。やらなければならないことなら手短に」を信条としている折木奉太郎はもちろん乗り気ではなかったが、入須先輩から煽てられて徐々にやる気になっていく。
 
 

 

 

 

 

映画のあらすじ

 

 

映画は、6人のメンバーが山道のようなところを歩いて行くところから始まる。

 

6人は山奥にある廃墟へと向かい、その廃墟内を手分けして探索する。

 

廃墟は2階建の館で、入り口に大きなホールがあり2階に向けて吹き抜け構造となっている。

そして、1階に数部屋、ホールにある大きな階段から2階に上がると、2階にも数部屋あるシンプルな構造の建物だ。

 

一通り探索を終えて集まると、1人だけ戻ってこなかったので、みんな揃って2階の上手袖にある部屋へと向かう。

 

その部屋はマスターキーがないと開錠できない部屋、つまり密室であり、そこには無残にも腕を切られて殺害されているクラスメイトの姿があった。

 

 

 

・・・と、あらすじはこのような感じになっています。

 

つまり、密室でクラスメイトが殺害されてしまった事件の真相はわからず、犯人もわからないままで映画は終了してしまいます。

 

脚本を書いたクラスメイトには連絡が取れない状態であるため、入須先輩は奉太郎たちにこの謎の推理を依頼してきたのです。

 

 

 

舞台の詳細については以下にwikipediaからの引用を載せておきます。

 

その廃墟の劇場は玄関ロビーとホールが吹き抜けとなり、ロビーのある劇場1階は舞台とホールを境に上手・下手に舞台袖と控室2部屋があり、上手袖のドアを開けるために必要なマスターキーのある事務室はロビーから下手側にある。

劇場2階は上手に照明調光室、下手に音響調整室が、事務室と同じ位置に用具室があり、いずれもロビーとホールを監視できる位置にあった。

ホールは打ち付けられており往来不可、海藤が殺害されていた上手袖のドアは事務室のマスターキーがなければ開錠できず、立てつけの悪い窓の外には夏草が生い茂っており往来の痕跡がなく、下手袖に通じる道は角材で塞がれているという完全な密室だった。

 

愚者のエンドロール wikipedia より引用しています。

 

 

 

映画の制作に関わった先輩たちから話を聞く

 

 

 

窓から逃亡した説

 

 

え、二階の部屋なんだから、そんなわけないじゃないですか!とツッコミを入れたくなりますが、密室だったのだから逃げるとしたら窓から外しかないでしょってことですね。

 

あまり現実的ではないですが、密室の室内のどこかに隠れているとか、被害者が自殺したとかでない限り、外に逃げ出すというのは正解かもしれません。

 

 

 

ザイルを使って外から侵入した説

 

 

そもそも内部から上手袖の部屋にいったと考えるから、鍵がかかっていることが不自然なんですよね。

 

ってことは、外から入ってきて外に逃げたと考えるのが自然。

 

ザイルを使って窓から侵入し、殺害後は鍵を閉めて再びザイルで外に逃げる。

 

一説としては有力かもしれません。

 

 

 

壁をすり抜けた説

 

 

まず有り得ないでしょって突っ込みたくなるけれど、もうこの謎はどうにも理解できないから「壁からすり抜けたんじゃない?」と半ば投げやりな一説。

 

これについてはスルーしておきます(笑)

 

 

 

 

事件の真相を奉太郎があばく ※ ネタバレ有り 

 
 
さて、これらの情報を手に入れながら、奉太郎はいろんなことを考えていくわけですが、最終的に映像に隠れたトリックに気がついていきます。
 
ここからはネタバレも多く含まれますので、もしも内容を細かく知りたくない!って人がいたら、飛ばしてしまってください。
 
 
この自主制作映画の映像は、常に登場人物6人を後ろから追いかけているようなカメラワークで撮影されています。
 
山道を歩く時も、6人の後ろから全員が収まるように撮影されているんです。
 
さらに、館に到着してからみんなで一斉に内部の捜索をするシーンがあるのですが、その時はロビーから1階と2階がよく見える位置でカメラが固定され、登場人物が捜索している様を定点カメラで撮影した様になっています。
 
そして、仲間が一人いないことに気がついた後は、再び登場人物を後ろから追う形でカメラが追いかけて行っています。
 
映画ですし、映像作品ですから、そういった「カメラマン」がいるのは当たり前です。
 
しかし、奉太郎は「そのカメラマンこそ、7人目の登場人物であり犯人だ」と推理するのです。
 
・・・ちょっとずるい様な気もするけれど、納得かもしれません。
 
 
まず、5人の登場人物の全員が、犯行ができなかったという裏付けをします。
 
被害者が殺害された上手袖の部屋は、密室だったわけですから、上手袖の鍵を持っている人物でないと殺害できません。
 
そして、その上手袖の鍵は、前述の定点カメラで見える部屋の中にあるのです。
 
つまり、定点カメラの映像を見れば、誰が鍵を取ることができたのかわかるということですね。
 
しかし、その定点カメラの映像中には、鍵を取りに行っている登場人物は見当たりません。

ということは、「カメラを操作していた人物だけが、鍵を取りに行くチャンスを作ることができた」ということになるんです。
 
 
そうして、7人目の登場人物である「カメラマン」が犯人であるという結末とし、奉太郎は観客が最初は犯人に気がつけない内容を鑑みて「万人の死角」というタイトルを名付ける。
 
 
 
 
 

終わりに

 

 

 

ちょっと書評でミステリーの内容を説明するのは難しくて、思ったより伝わっていないかもしれませんね(笑)
 
しかし、やはり古典部シリーズは内容だけでなく「キャラクター」がかなり光っています。
 
メインの主人公なので「奉太郎」が光るのは当然なのですが、「愚者のエンドロール」は他の古典部シリーズの中でも特に奉太郎が光る作品だと感じます。
 
「やらなくていいことならやらない。やらなければならないことなら手短に」がモットーの奉太郎が、先輩の頼みとはいえ面倒ごとに首を突っ込んでいくところや、切れた推理を展開するシーンは読み応えありです。
 
やっぱり奉太郎も一人の人間であって、先輩にうまくおだてられることによって、面倒だと感じながらも進んで推理していく「心境のブレ」も読みどころだと思います。
 
みんなそれぞれ個性が強くておもしろいのですが、徐々に心を許して変化していく関係性も、古典部シリーズの面白さですね。
 
 
この愚者のエンドロールについては、文章よりも映像の方がリアルでわかりやすかったと思います。
 
アニメで見ると、より良いかもしれません。