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【書評】「さよなら、そしてこんにちは」(荻原浩)現実的でどこか共感できる7つの短編

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 さよなら、そしてこんにちは (光文社文庫)

 

「さよなら、そしてこんにちは」

荻原 浩 著 読了。

 

7つの短編が収録された短編集。

収録された作品のどれもが、現実的でありえそうな作品で、自然と溶けこめる世界観。

現実的だからこそ、主人公たちの考えに共感できるし、自然と顔がほころぶような面白さを持っています。

荻原さんが描く「リアルでイメージしやすい世界観」を楽しみながら、7つの短編をご紹介していきます。

 

今回のトピックはこちら!

 

 

 「さよなら、そしてこんにちは」に収録された7つの短編

まずは、「さよなら、そしてこんにちは」がいったいどんな作品なのか、全体的なイメージを書いていきます。

それから、7つの短編を1作品ずつネタバレにならない程度のあらすじ紹介をしていきますね。

 

さよなら、そしてこんにちは

この短編集のタイトルにもなっている作品。

葬儀会社の勤める「陽平」が主人公として日々を過ごす。

笑い上戸の陽平は、仕事上どうしても笑うわけにはいかないシーンに立ち会うことがほとんどなので、どうにかこうにか笑いをこらえようと奮闘する。

葬儀の仕事が忙しい中、陽平の妻は出産を目前に控えており、心中は妻と生まれてくる娘のことばかり。

読みどころは、

葬儀という人の命との別れと向き合う重要な節目に立ち会いながら、心の中では妻のこと、娘のこと、そして笑いを堪えることでいっぱいになっている陽平の心の声。

 

葬儀社の人であっても、仕事をしている中で「心の中では別のことを考えることもあるよなー」と妙に納得できるというか、リアルに想像できてしまう面白さがあります。

 

ビューティフルライフ

リストラされた父親、いつも天然で楽天家の母親、不登校の息子、わがままで反抗的な姉。

そんな4人家族が、父親のリストラを機に東京から郊外へ引っ越してきた。

理由は、父親が農家をやりたい!と言い始めたからだ。

父親は、農家になるための修行がきついと愚痴をこぼし、母親は相変わらず天然だし、姉は電波が入らないとか虫が多いとかで騒いでいる。

郊外へ引っ越してきてからの家族を見ていると、不登校になんてなってられないかもと思い始める息子・・・

 

なんだかんだで仲良しな家族と、よくある親と子供の言い争いというか喧嘩というか、微笑ましい空間がそこにあります。

 

スーパーマンの憂鬱

スーパーの食品課、非生鮮食品係長の孝司は、売り上げにつながりそうな食品はどれかについて日々情報収集を怠らない。

ワイドショーや情報番組を事前にリサーチし、その商品をあらかじめ店頭に並べることで売り上げアップにつなげるのだ。

どうにかして、他の店舗が情報を仕入れる前に独自に情報をゲットして、ダントツの売り上げを!と奮闘するのだが、その結末やいかに・・・

 

スーパーで働くビジネスマンだからスーパーマン

仕事で一旗上げてやろう!と必死になる姿は、働くひとりの人間として共感できます。

情報に振り回されてしまう姿も、微笑ましく感じますね。

美獣戦隊ナイトレンジャー

 幼い子供2人と、夫と姑を抱える由美子は、子供向けの超人ヒーロー番組に夢中になっていた。

理由はただひとつ。

登場するヒーローのひとりがお気に入りで、日々の楽しみになっているからだ。

子供が見たいから私も見るのよ!と言わんばかりで、なんとかヒーロー番組を見ようと取り繕う。

ある日、突然お気に入りのヒーローが降板することになり、奇跡的に近所で生登場のイベントがあると知る。

そこから、由美子の必死の行動がスタート。

 

自分がお気に入りの俳優を見たいのに、それを子供のせいにしてみたり、子供を食べ物で釣ってでもイベントに行こうとしたり。

そんな子どもらしいところや、主婦になっても持っている女性らしい部分が思わず笑えてしまう作品です。

寿し辰のいちばん長い日

東京で寿司屋を営む大将「辰五郎」は自分の腕や寿しに対する知識や思いなどに絶対的な自信を持っている。

典型的な親分タイプで、訪れるお客さんにも横柄で強気な態度をとってしまう。

しかし内心では、自分の店がなかなか繁盛していないことに不満を抱えているようだ。

 

ある日、有名なグルメ評論家らしき人物が店を訪れる。

ここがチャンス!とばかりに、辰五郎は勝負を仕掛けるが・・・

 

プライドの塊みたいな大将が、グルメ評論家を前にうろたえる感じが面白いです。

やっぱり、ひとりの人間なんだなーと思わされるし、共感できるところがあります。

スローライフ

マスコミに引っ張りだこな料理研究家の美也子。

夫の仕事の都合で4年間イタリアに住んでいて、その頃に学んだ料理を本にして出版したところ、大ブームになったのだった。

今日は、テレビの取材と書き上げなければならない原稿に追われ、まさにパンク寸前。

スローライフというタイトルとは真逆なストーリーだが、果たしてそのつながりとは?

 

有名になって活躍できるようになったけれど、そのスポットライトは自分が思っていることとは少し違うところに当てられているような感覚。

本当はそっちで売れたいわけじゃないのに・・・と思いつつも、売れている現状をどうにか受け止めようとする。

人間味を感じます。

長福寺のメリークリスマス 

長福寺で住職を勤める覚念は、9歳年下の若い妻と幼い娘と暮らしている。

お寺を営んでいるからこそ、異教徒のお祝い事などを経験したことがない覚念だったが、今年は妻と娘のわがままでどうしてもクリスマスをやらねばならないようだ。

寺の住職という固い思いと、家族を楽しませてあげたいというひとりの人間としての思いに悩みながら、覚念は行動を始めるが・・・

 

いろいろな境遇で育ってきた2人が結婚すると、家庭内では考え方や習慣のギャップで衝突することはありますよね。

そんな世間でよくあることを取り上げた作品で、共感できますよ。

リアルであり、共感できる物語に魅了されます

 

「さよなら、そしてこんにちは」に収録されている短編は、どれも現実味がある設定ばかりです。

リアルで、とても共感できるんだけど、魅力される面白さがあるんですねー。

どの物語を読んでも、

「あー、これは現実であり得る話だな」

と思えるので、登場人物が作り上げるシーンがイメージできる感じです。

 

小説だからこそ書ける世界観とかキャラクター設定とかも、非現実が味わえて面白いのですが、

これだけリアルな作品だと、共感できるしイメージできるし、内容がすんなり頭に入ってくるんですね。

直感的に楽しめる作品が詰まった短編集なので、とても読みやすい作品でした。

 

 

日常に溢れる「小さな幸せ」が読み取れる物語

 

収録された7つの短編に共通しているのが、

「日常に溢れる小さな幸せ」

が読み取れる内容だということ。

 

読後感がとてもほのぼのするような作品ばかりです。

 

身近にたくさんいそうな主人公たちが、日常で起こりそうなことに奮闘しながら向き合っていくところを見ていると、「ふふっ」と笑えるし共感できる。

人間味に溢れているので、感情の動きなんかを読み取りながらリアリティを楽しめるんです。

 

不思議と元気がもらえる短編集として、再読もありだなと思っていますし、荻原さんの他の作品も読んでみたいと思いますね。

 

終わりに

荻原さんの作品を読んだのは初めてでしたが、どの短編も本当に面白かったです。

また新しい作家さんを発掘した感じで、テンション上がってます。

 

この本は、ツイッターでフォロワーさんからご紹介頂いたものなのですが、

やっぱりツイッターで本の紹介やご献本頂いたりすることはありがたいです。

自分だけだったら読むことはなかったかもしれない本なのですからね。

ご紹介いただけたお陰でその面白さに気がつき、これからの読書が楽しくなるきっかけを頂いたと思うと、本当にありがたい。

これからも、こうしたつながりを大切にしていきたいと思います。

 

本日も、てかてんの書斎にお越しいただきありがとうございました!

 

 

さよなら、そしてこんにちは (光文社文庫)
荻原 浩
光文社 (2010-11-11)
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